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Rose letter
1,475文字
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あなたに手紙を書くなんて初めてですね。連絡も一方通行になって3年。
だからかな、私が手紙を書いているのは。
実は、今、病院のベッドの上でこの手紙を書いています。
ある日突然、頭の中に靄がかかったみたいに何も考えられなくなって、起き上がれなくなって、いっそのこと死んじゃった方がいいのかなって考える日が続いて、家族に病院に連れて行かれて、少しゆっくりやすみましょうって診断が下されて、気づいたらここにいました。
入院することになって、家族はほっとしているみたいです。
そりゃ、一日中横になっている私を見ていたら、この先どうなるんだろうって不安にもなりますね。
まだ、三日目ですけど、薬のせいかすごく眠たいんです。書き始めて、5回もあくびが出ました。何だかナマケモノみたいですね。
病院の先生は「人に言いたくないことでも、心にため込まないで話してみましょう」と仰るんです。でも、私は話したくない。なぜ医師だからと、見ず知らずの人に心の内を話さなくてはならないのでしょう。話さないのは、話さないだけの理由があるんです。話さないことで、病気が悪化して、もし死んでしまっても、それでいいと思うんです。
この3年間の間に、私の身にも色んなことが起こりました。全てあなたの知らないところだから、私がこうなったのは、あなたが原因ではありません。たぶん、私が今まで抱えこんできたことが、爆発しちゃったのだと思うんです。まあ、自業自得なんでしょうね。
また、あくびが出ました。
目を閉じると、瞼の内側に満天の星空が広がるんです。ほら、あなたとふたりで見上げた夜空。道の真ん中にゴロンて横になって、見上げたでしょう?天の川は、英語でミルキーウェイっていうけれど、ほんとにそうなんだって思った。そのとき、思い出したことがあったのです。
震災が起こった日の朝方。寝ていたら、妙に胸がざわざわして、目を覚ましたの。普段なら、気のせいってまた寝るのに、その日はなぜか廊下に出てカーテンを開けた。そうしたら、あなたと見た天の川よりも、もっともっと真っ白な星空があったの。星と星の隙間がないくらいに、空全体が天の川みたいだった。星空が今にも落っこちてきそうで、キレイっていうより怖かった。そうしたら、その日の午後、地震が起こったでしょう?だから、あなたと星をみていても、このあと何か良くないことが起こるんじゃないかって不安だった。
あなたは、「流れ星を3回見つけたら、帰ろう」って言った。私は帰りたくなくて、わざと見つけられない振りをしたんです。
左手を伸ばして、あなたの腕に触れたかった。あなたが好きだって、言いたかった。でも、どちらもできなかった。それができていたら、もう少し違ったのかもしれません。
私は、子どもの頃から、自分の気持ちを言葉にして伝えてこなかったんです。いつも人の陰に隠れて、誰かが私の気持ちを代弁してくれるのを待っていた。それで何とか上手く行っていたから、このままでいいんだって。自分の意見を言って、波風を立てるくらいなら、大人しくひっそり暮らしていく。そうしたら、余計なトラブルに巻き込まれずに穏やかに人生が終わるだろうって。ほんと、どうしようもないダメ人間ですね。
だから言ったでしょう?あなたに罪はないって。
この手紙があなたの元に届くまで、3.4日はかかるでしょう。今日は9月14日だから、18日の朝、公衆電話からあなたに電話をかけようと思います。
病室に携帯は持ち込めないから。何回もかけた番号だから、メモがなくてもかけられるのよ。すごいでしょう?
だから、お願い。電話に出てほしいの。
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