その他
電車に揺られて
1,101文字
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子供の頃、家出をしたことがある。
切符を買って、でも子供だったからお金はそんなに持ってなくって買えたのは隣の駅までだった。
不安な気持ちで電車に乗る。
電車に揺られて外の景色をずっと眺めていた。
やがて街を抜け山を抜けトンネルをくぐり別の町へ、僕は不安な気持ちでいっぱいだったけれどいつの間にか電車に揺られて眠っていたらしい。
いつのまにか終着駅へ着いていた。
困惑したまま電車をりた僕は、プラットホームから外の街を眺めた。
海が見える。
海辺の街は、僕の住んでいた町とはずいぶんと様相が違って建物はまばらではるか向こうの地平の彼方まで駅のプラットホームから見えた。
入道雲が出ていて、強い潮風が吹いてくる。
空はどこまでも深い群青色で、ひまわりがこっちを見ていた。
……どうしよう。
切符は次の駅までしかなかったから、改札口を出ることができない。
途方に暮れていると一人の老紳士が声をかけてきた。
「どうしたんだい坊や、お父さんやお母さんとは一緒じゃないのかい?」
困った僕は、おずおずと切符を見せた。
「おや、乗り過ごしてしまったんだね。1番線のホームで待っていたら電車が来るから、それに乗って戻ることができるよ。おじさんも同じ方向だから一緒に連れてってあげよう」
僕はコクンと頷いた。
しばらく待っていたらやってきた電車に2人で乗る。
老紳士の隣に座ると僕はお腹がグーッとなった。
「坊や、菓子パンならあるけれど食べるかい?」
そう言って彼は袋入りのアンパンを渡してくれた。
「本当はお行儀が悪いかもしれないけれどね。お腹が空いてるなら仕方ないよ」
アンパンの甘い味が口の中に広がっていく。
不安な気持ちが優しい甘さで和らいでいくような気がした。
「あのね。僕、家出しちゃったんだ」
「そうか、おじさんも子供の頃家出したことがあるよ」
「そうなの?」
「そうだよ、ちっさい時にはみんな家出をしたりするんだよ」
老紳士はそう言ってにっこりと微笑む。
「あのねママに怒られちゃったの」
「そうなんだ。でもママも君のことが嫌いで怒こったんじゃないと思うよ」
「でも、ごめんなさいって怖くて言えなくって」
「こうやっておじさんに話してるって事はごめんなさいって言おうと思ってるって言うことだよね」
「……うん」
「それじゃあきっと大丈夫だ。お家に帰ったらお母さんに謝ったらきっと許してくれるよ」
老紳士の優しい声はやがて僕の気持ちを落ち着かせてくれた。
トンネルを抜けやがて僕の町に電車は止まる。
元来た駅に戻ってきたのだ。
駅員さんに話をして改札を出ると僕はまっすぐ家に走って行った。
――あの日から十二年。
僕は自分の意志で街を出て、一人暮らしをするために駅の改札をくぐって行った。
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