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義理チョコ
934文字
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2月14日の夜。職場で受け取ったいくつかのチョコレートをテーブルに並べた。もちろん本命ではない。お情けでいただいたものばかりだ。
ただ一つ、他のものとは少し雰囲気の違う包みがあった。
同僚の女性から渡された小さな箱は、簡素だが丁寧に包装されている。中を開けると、小さめの焼き菓子が数個入っていた。形はやや不揃いで、いびつなものもある。もしかして手作りだろうか。
それだけでは彼女の真意ははっきりとしないが、手作りの菓子をもらうのは人生で初めての経験だった。
いろいろと期待を膨らませてしまうが、まずは一口食べてみることにした。
なるほど……。そんなに甘くはなかった。
どうやらこれはギリチョコなのだろう。それが私の冷静な分析結果だった。
さて、来月のホワイトデーに向けて、適切なお返しを考えなければならない。
相手の意図を勝手に勘違いして、今後の関係が気まずくなるのは避けたい。ネットで情報を集め、AIにも相談してみた。
「義理と本命、どちらの可能性もある場合、どのようなお返しが適切か」
AIの回答は次のようなものだった。
ホワイトデーのお返しには、品物によって意味が含まれる場合があります。
キャンディは「あなたが好き」、マシュマロは「嫌い」などです。
勘違いのリスクを避けるなら、特定の意味を持たないとされる「チョコレート」や「フィナンシェなどの焼き菓子」を選ぶのが無難です。
少し高価な市販の焼き菓子にすれば、義理だった場合は「丁寧なお返し」として、本命だった場合は「安物で済ませない誠意」として受け取られます。
納得のいく論理だった。フィナンシェの詰め合わせを返すことに決め、少しだけ肩の荷が下りた。
方針が決まったところで、箱に残っていた菓子をつまむ。
改めて味わってみると、やはり水分が足りておらずパサパサしていて、少し焦げたような苦味もある。お世辞にも美味しいとは言い難く、チョコレート菓子と呼べるかどうかの境界線上にある。
最後の一つを手に取ったとき、箱の底に小さなメッセージカードが敷かれているのに気づいた。
見慣れた彼女の丸い字で、こう書かれている。
「不器用でゴメンナサイ。でも自分なりに頑張って作りました」
少し高めのフィナンシェを用意する方針は、どうやら間違っていなかったようだ。
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