コメディ・日常
雪上の奇跡
1,103文字
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雪の降る中、僕は一人でスキー場にやってきた。
生まれて初めての経験だ。スキーやスノーボードは今まで一度もやったことがない。昔から体力に自信がなく、アウトドアスポーツ全般が苦手で、滑ること自体にはまるで興味がなかった。
僕には他に夢中になっている趣味があり、今日は純粋にそれを楽しむために、この雪山まで足を運んだ。当然、スキー板やスノーボードは持参していないし、レンタル施設に並ぶつもりもない。
車を駐車場に停め、チケット売り場や食堂のあるセンターハウスを素通りして、そのままゲレンデへと向かった。
山の寒さは予想していたので、厚手のダウンジャケットにマフラー、手袋と、自分なりにしっかりとした防寒具は用意してきた。しかし、周囲の人々が着ているスキーウェアではないため、少し浮いている自覚はあった。
ゲレンデに出ると、目の前には一面の銀世界が広がっていた。雪が眩しいほどに太陽の光を反射しており、視界が白く飛ぶ。これほど強い照り返しがあるなら、サングラスを持ってくれば良かったと思うほどだった。
しばらくの間、センターハウス周辺をうろうろと歩き回ってみたが、僕が求めているものは一向に見つからなかった。もしかしてリフトに乗ってゲレンデの上の方まで行かなければならないのだろうか。いや、特別な催し物であれば、もっと人目につく麓の広場でやるはずだ。機材の搬入も大変だろう。
そんな推論を巡らせていたときだった。
小さな悲鳴とともに、女性のスノーボーダーがゆっくりと近づいてきた。斜面を滑ってはいるが、その場所はほぼ平面に近く、実際の速度は歩く程度しか出ていない。それでも初心者の彼女にとっては、自分の身体をうまくコントロールできず怖かったのだろう。
今にもバランスを崩して転倒しそうだったので、僕は思わず手を伸ばして彼女の体を支えた。
「ごめんなさい。ありがとうございます」
女性はニット帽の下からのぞく顔を赤らめ、恥ずかしそうに言った。
「いえいえ。こちらこそ、邪魔なところに立っていたみたいで」
僕は冷静を装って紳士的に振る舞ったつもりだったが、内心では胸が大きく高鳴っていた。彼女の姿が驚くほど美しく見え、しばらく見とれてしまうほどだった。
女性が何度か頭を下げて去っていった後も、僕は気を取り直してゲレンデを歩き回った。しかし、どれだけ探してもステージや観客の集まりは見当たらず、目的の催し物は開催されていないようだった。
スキー場という特別な環境下でしか体験できないという『ゲレンデマジック』。
手品やイリュージョンショーを愛好するマジックマニアとしては、雪上で行われるというその奇跡のショーを、ぜひ一度この目で見てみたかったのだが。
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