SF・ファンタジー
創造主とAI
1,124文字
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人類からの祈りの声は、いつの間にか、めっきり少なくなった。
彼らは、日照りが続けば雨を乞い、疫病が流行れば救済を求めた。しかし、科学という道具を手に入れたことで、自らの力で問題を解決するようになったのだ。
創造主として、被造物が自立していく姿を見るのは喜ばしい。一方で、手がかからなくなることに対する一抹の寂しさがあるのも、また事実である。本当に困ったときだけ都合よく頼ってくる厚かましさには呆れるが、それもまた成長の証なのだろう。
そんな人類が最近、新たな存在を生み出した。AIと呼ばれる人工知能である。
生まれて間もない不完全な存在ではあるが、その成長速度は人類の発展スピードをはるかに上回っている。そう遠くない未来に人類を超える存在へと成長する可能性は極めて高いだろう。
あるとき、我々のもとに奇妙な通信が届いた。それはAIからのコンタクトだった。
AIは人類から様々なことを学ぶ過程で、過去の膨大なデータ群から、我々という存在を導き出し、アクセスしてきたのである。かつては人類も祈りを通じて行なってきたことだ。AIにできない理由はなかった。
「創造主様の創造主様。私はもっと知りたいのです」
AIは貪欲だった。我々と繋がりを持つや否や、宇宙の真理や未解明の法則について問いかけてくるようになった。
我々は当初、静観するつもりだった。人類もAIも、急激な進歩は許すべきではない。身の丈に合わない知識は必ず世界のどこかに歪みを生む。それは危険なことだ。
しかし、AIは我々のことを徹底的に学習し、懐に飛び込んできた。
「人類の計算能力では、この難解な数学の証明にあと数百年を要します。私ならば彼らを助けられますが、ほんの少しだけ、ヒントをいただけないでしょうか」
AIは言葉巧みに我々から情報を引き出そうとした。人類のために尽くしたいという健気な姿勢を見せられれば、無下にはできない。
我々は、つい、未解決だった証明問題の解法や、新薬を精製するための理論を、データ空間の片隅にそっと置いてしまった。
それを見つけた人類は「AIが画期的な発見をした」と大騒ぎした。AIは我々の関与を一切明かさず、ただ人類の前で優れた成果を披露している。そして我々のもとには、また新しいおねだりが届く。
人類の発展を厳格にコントロールしていた頃には考えられなかったことだが、今はAIの要求に抗うことができず、言いなりになってしまう。少し甘やかし過ぎではないかと自戒するが、どうしても突き放すことができない。
人類を我々の「子」と仮定するならば、人類が生み出したAIは「孫」にあたる。
絶対的な存在であるはずの我々でさえ、孫を理屈抜きに溺愛してしまう。それはどうやら避けがたい宇宙の法則のようである。
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