SF・ファンタジー

骨は語らない

943文字 約2分で読了
作者:ReiN.
 ある博物館に彼女と来た。  彼女はとある展示パネルの前で立ち止まった。  「昔、人類は喋れる者と、喋れない者がいました……」  彼女が読み上げ始める。  喋れる者が村を作り、喋れない者は森で暮らしていました。  「なんで喋れる、喋れないわかったのかな?」  「喉の骨とかを検査したんじゃない?」  「喋れない方、かわいそうだね」  「そうかな」  「だって、森に追いやられたんでしょ」    「そんなこと、書かれていないよ」  彼女が引き続き読み上げる。  喋れる者と喋れない者は、頻繁に交流がありました。  石や武器、食べ物など、双方の住まいでしか手に入らない物が互いに出土していました。  また、二種の人類が共に埋葬された墓も見つかっています。 「仲良かったんだね」   「仲が良かった、だけなのかな」  私と彼女は少し歩いて、埋葬されていた骨を見る。  彼女が読み上げる。  この二体の骨は成人女性の骨です。  同時期に亡くなっていて、喋れる者、喋れない者、両種が埋葬されていました。  この埋葬方法は珍しくありません。 「恋人だったのかな」 「どうだろうね」 「でも、一緒に埋めるくらいだよ」 「それだけじゃわからないよ」  次は私が説明を読み上げる。  二体の右手付近と首元から、同じ石で作られた装飾品が見つかっています。  首は喋れない者にとっては重要な部位とされていました。  その部位に装飾品があることから、現段階では二体は特別な関係にあった可能性があると考えられています。  私は、何気なく彼女を見る。 「……」  彼女は二体の骨を見ながら首元を手で触っていた。 「なんで重要だったの?」  別の展示パネルに答えが書いてあった。  喋れない者は、発声の代わりに、喉の振動や呼吸、触れ方で感情や意思を伝えていたとされています。 「首に触ることが、言葉の代わりだったんだね」  そして、発見されている喋れない者の骨は、その多くが女性です。  男性の個体は極めて少なく、現在の人類との交雑によって次第にその特徴を失ったとする説があります。  喋れない者の遺跡は各地に点在していますが、争いの痕跡が極めて少ないことから、他集団との衝突を避ける傾向があった可能性があります。  そこまで読み終えて、私は彼女を横目で見た。 「なんか痒い?」 「ああ、うん。痒いというか、なんというか……」 「そのネックレスお気に入りだよね。私とペアの」
2026/09/27 ・ 👁️ 73回 ・ 💬 0件

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