ホラー・怪談
乙姫様 其の一
504文字
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雪ちゃんが笑ってるところはほとんど見たことがない。
いつも体中傷だらけで、家の外にいる。
お母さんが言うには雪ちゃんの父親に殴られているらしい。
隣の家から 悲鳴が聞こえる。
「痛い痛い、やめて!」
その後、雪ちゃんが家の外に放り出される。
「雪ちゃん、遊ばない?」
電信柱のかげで泣いている彼女に声をかけて、家に招いた。
2人で、ビスケットを食べてお人形で遊ぶ。
「桜ちゃん、そのお人形かわいいね」
「あー、これは乙姫様にもらったの」
「乙姫様?」
「何でも願い事を聞いてくれる神様だよ」
「山の外れの神社に夜中に行って、取り替えて欲しいものと同じぐらいの価値のものを、置いてお願いしてくるの。そしたら乙姫様が一つ欲しいものをくれるんだよ」
「何でも?」
「うん何でも!」
「本当に?」
「うん、でも同じぐらいの価値のものじゃないとだめらしいけど。あとね、あげたいものの名前を言って『乙姫様、乙姫様……をあげますから代わりに……ください』っていうのもいいらしいよ」
それからしばらくして公園で彼女を見かけた。
彼女の体の傷が消えていて、父親とおぼしき男性と一緒に歩いている。見たことがないような笑顔だった。
……彼女は何を取り替えてもらったのかな。
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