歴史・時代
宿命
455文字
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俺が今まで本気で人生を諦めた事がなかったのだと気付いたのは、戦争で片腕を失ってからしばらくしての事だった。
片腕を失う前、俺は「いつどうなってもいい」とか「死ぬのは怖くない」と口先で言いながら泥水をすすってきた。時には幸福の女神に微笑まれ、難を逃れた時に舌打ちをした。
けれど戦いの果てに片腕が吹き飛んで、何週間何カ月ともがき苦しんでみて、分かったんだ。自分が、本気で人生を諦めようとした事は一度だってなかったという事に。
俺はいつだって地べたを這い回り、自分の行く道を探して来た。幸運が訪れるのを心の底で祈ってきた。このくだらない世界で、生きていたかった。
久しぶりに高熱が引いた朝、病室の窓際で白んだ空を見た。俺は何度も、この空を見たいって本当は思っていた。諦めきれなかったんだ。だから、この辛気臭い病室で唇を噛んでいる。
片腕がなくなったこの先も、俺は眩しい世界を掴もうとするだろう。辛く苦しいまま、血反吐と悪態をぶちまけながら、諦めきれずに生命の根を伸ばす。
悔しいけど、それが命を宿したまま震える俺の宿命らしい。
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