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遠く遠く輝く星

1,103文字 約3分で読了
私は浮気をしている。 星のように、遠く。 星のように、輝く。 もう七年も経つのに、あなたの歌は未だに。 在宅ワーク中、ガチャリと扉を開ける音が聞こえた。 「……!」 「……♪」 通話中だったので、お互い手だけ振る。 今でも彼女と同棲しているなんて、信じられない。 彼女はかつて、私の大好きなアーティスト。 そして私はただのファンだった。 ネットシンガーとして、最盛期はかなり人気だった。 でもある時突然、彼女は「自身の活動」に区切りをつけた。 当時は分からなかったが、裏で色々とあったらしい。 引退、失意のどん底。 ……のはずが。 「今日からアルバイトに入りました! 接客業は初めてでご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いします!」 数日後、同じアルバイトに彼女が入ってきたことで、私の思考は宇宙の彼方へと吹き飛んでしまった。 「おい!四回目だぞ!」 「も、申し訳ございません……」 「失礼しました!お客様。私が代わりに承ります!」 そして彼女は、ただの不器用で手間のかかるバイトの後輩になった。 「う……先輩、本当ごめんなさい」 「いいよ、いいよ! これからも、じゃんじゃん頼っていいからね」 「……」 店側は迷惑だろうが、あなたを独り占めできるのは幸せだった。 でもこの程度の関係なんて、すぐになくなってしまう。 ……何よりまた歌声が聞きたい。 「え……?」 ファンであることを隠して、生まれて初めて同性に告白した。 なんで? もっと方法があっただろう?と今なら思う。 でも当時はそれくらいしか、あなたを繋ぎ止める方法が思い付かなかった。 「あの……はい、私で良ければ……」 そして、なぜか受け入れられた。 数年後、お互い職に就いた。 私はただの事務職に。 あなたはギター教室の先生に。 どうやら、今はバイト時代のような失敗はないようだ。 「先輩、今日もついてきますか?」 「うん!」 仕事も終わり、すぐ準備する。 夕暮れの川辺。 彼女はたまに弾き語りをしている。 ほとんど人のいない川辺で、あなたの声が響く。 下手なら嘲る人もいただろうね。 皆、絶景でも見たかのような顔で足を止める。 今の時間で良かった。 この程度の人だかりで済んで。 「――」 あなたの歌が終わった。 パチパチと拍手が起こる。 歌っている時のあなたは未だ、私から何光年も先へと離れていく。 そうして瞬く。 「先輩ー?そろそろ帰りますよ?」 自分から繋ぎ止めたくせに。 近くのあなたより、星空で輝くあなたの方が好きなんて。 「う、うん」 この浮気は、煌めく星には知られてはいけない。 本当に愛しているのが、何かを知られてはいけない。 悪い、悪い人間だ、私は。 でも。 星空の下のちっぽけな人間で良かった。 きっと、遠くの星にこの気持ちは届かないから。
2026/10/21 ・ 👁️ 8回 ・ 💬 0件

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