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生まれて初めての、さようなら

602文字 約2分で読了
死の先は無だ。 哀しみや喪失に想いを馳せるなど、時間の無駄だ。 ずっとそう思っていた。 親の手前、ずっと口先では祈ってはいたが、どうしても違和感が拭えなかった。 墓守の仕事に就いてから、その違和感は確信に変わった。 愛情深い雑貨屋の奥さんも、怪しい連中と取引していた宿屋のあいつも、世話焼きの酒屋のおばさんも、近くで討たれた賊も。 皆等しく、土の下に還っていく。 何なら、敬虔に祈っていた人の方が、惨い死を迎えていることが多い気がする。 これが生前の試練なのか? その先に、本当に報われる場所があるのか? どうしたって信用できなかった。 遺された側の哀しみと喪失の穴ぼこを、「埋めるために用意された土」なんじゃないかと思えて仕方なかった。 だから、たとえ刹那であってもこの生に意味を見出した方が、よっぽど有意義だと思った。 けれど、あなただったもの――。 いいや、あなたに。 シャベルで土をかけた時に私の不信心は簡単に揺らいだ。 哀しみや喪失に想いを馳せるなど。 ……そのはずだったのに。 ポロポロと小さな小さな雨は、私の瞳から絶えず降り続ける。 どうして私は泣いてる? 死の先は無のはずだろう? 色々御託を並べても、私が死に意味を見出せなかったのは、 きっと。 きっと「あなたが生きるこの世界」が好きだったんだ。 生まれて初めて、心の底から祈った。 初めてちゃんと誰かに、別れを告げた気がした。 これが罰だというのなら。 神様、私を地獄へ。 あの人を天国へ。
2026/10/20 ・ 👁️ 15回 ・ 💬 0件

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