SF・ファンタジー

図書館にて

684文字 約2分で読了
作者:しとえ
 気がつけば、私は図書館の中をウロウロとしていた。 「何をお探しですか?」 図書館司書の方だろうか、話しかけやすそうな人物が私に話しかけた。 性別や年齢はいまいちわからない。 男性のようにも女性のようにも見えるし、若いようにも年老いているようにも感じた。 「本を探しているの」  ここが図書館なのだからそれは当たり前のことだろう、だが私はそう言った。 私はその人物に案内されて、床の下に水が流れる回廊を歩いて行く。  空には魚が泳ぎ、本棚はいくつも階段があって迷路のように入り組んでいる。  まるで騙し絵の世界みたいだ。 本棚には見たことがないような、鍵のかかった本、宝石の埋め込まれた本、石でできた本などが並んでいる。 どこどれほど歩いたのか、よく思い出せない。 幾千の宇宙を越えて、宇宙の境目を渡り歩いた先に私の探していた本があった。  そこには私自身の記憶が記されていた。 幼い日の私、成長していく私、悩んでいた私、そして今の私。 私はページをめくっていった。 だが本は途中から真っ白になっているのだ。 「どうして文字がないの?」 「あなたはその先をまだ生きていないからですよ」 その人物は言った。 「その先の物語はまだあなたは作っていない。これから作っていくのです」 私はパタンと本を閉じた。 「この先を知りたかったの……」 その人物は微笑んだ。 「だったらこれから作っていけばいいではありませんか。あなたの本はまだ完成していないのです」  その言葉に、私はハッとした。  そうだ、この続きは今から書けばいいのだ。 答えを知りたいと思うんじゃない。 これから答えを作るんだ。 私は本を本棚に戻した。 そして、この図書館を後にしたのだ。
2026/10/19 ・ 👁️ 18回 ・ 💬 0件

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