SF・ファンタジー

最後の雪の結晶

713文字 約2分で読了
作者:しとえ
穏やかな春の日に 溶けてゆく雪のように この胸の悲しみも 溶けてしまえばいいのに 外に見えるはなごり雪 うたたかな光の中で 最後に消える雪の結晶は 一体何を思ふのだろう  私たちの仕事は人間を幸福にすること。 小さな赤ん坊の笑顔とともに生まれその子供が成長していく中で幸福だと感じることを少しでも増やしていくこと。 妖精なんていないっていう人はいっぱいいるけれど、そういう人には私たちの姿は見えない。 きっと分からないだろう。 私たちが生まれてきた意味も。 人間が成長する時に私たちはいっぱい話しかける。 よく天使と悪魔が迷っている時に話しかける図など描かれることがあるが 実際、話しかけているのは私たちだ。  笑い声が聞こえる。 赤ん坊の笑いが。そのキラキラした笑顔と共に妖精たちは生まれるのだ。 だけど妖精というのはその人が不幸になったり悲しんだりすると消えてしまうのだ。 消えていった仲間たちのことを思うと、とっても悲しい。 私たちはどうして生まれてきたのだろうか。  私はずっと彼女の人生を見てきた幸福になれば生まれ不幸になれば消えていく私たちの仲間たち。 一番多いのは赤ん坊の時に生まれてくる妖精たちだけど大人になって幸せな時に生まれてくる妖精もいる。 妖精はみんな幸福の化身なのだ。 彼女が窓の外を見ている。 雪はほとんど消えかけていて、その上の雪の結晶もみんな消えてしまうのだ。 「幸福な人生をありがとう」 その日を見ながら彼女がそう言った。 その言葉はきっと私に言ったんじゃないかなと思う。 彼女の顔、生まれた日に産声と共に生まれて、彼女が年老いて死んでいく今日までずっとそばにいた。 彼女の命が消えてゆくのがわかる。 私もまた消えてゆくのだ。 それは最後の雪のかけらにも似て……
2026/10/01 ・ 👁️ 41回 ・ 💬 0件

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