ホラー・怪談
誰かさんと音楽
641文字
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ありふれた真夜中。ふと、部屋のドアが僅かに開いているのに気付く。
試験勉強の最中だった私は、中途半端に開いているドアの隙間を不気味に感じた。闇の中に紛れ、知っているのに知らない「誰か」がこちらを見ている感じがしたのだ。
私の中で一気に不安感が募り、すぐにドアを閉じに行こうと足早にデスクから離れた。いつから、どうして。そんな事を考えながら、私は暇そうな冷たいドアノブに手を掛ける。
すると、ああ、恐ろしい。廊下から、ぬるい空気と共に「誰か」が私の中へ入って来た。脳内へ一気に話し声が響き渡り、知らない柔軟剤の匂いや見知らぬ人間の指紋、熱を帯びた息遣いがベタベタと身体中を這いずり回る。侵食される。
私は何とかドアを閉めたが、「誰か」の気配は消えない。私の中に居座ろうと走り回り、叫び回って飛び回る。うるさい、黙れと私が叫んだ所で意味などない。この静かな自室で声を上げているのは、私一人だ。
このままでは何もかもが嘘で、何もかもが本当になってしまう。それが嫌だから、私は試験勉強に打ち込んでいた。何が嘘で本当かを、私なりに見極める為に私はこの部屋を守っていたんだ。それなのに「誰か」の所為で、全てが台無しだ。
私はマーブル模様になった視界の中で、机に置いてあったラジカセのスイッチを必死で押し込む。
ノイズと共に、クラシックなピアノが聞こえてくる。滑らかな肌の様に美しい、真珠色の音楽が。美しい、陶器の様に無垢な音が、沁みてくる。
やがて、ピアノが終わる頃。「誰か」は私の頭の中からいなくなっていた。
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