コメディ・日常
手のひらの体温
385文字
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空から舞い落ちる雪は白く何もかも覆い隠してゆくようだった。駅の前のイルミネーション、騒々しい街の音。
誰もが足早に過ぎ去って行く中で私は1人彼を待っていた。
私だけが動かない。
この世界の中で私だけが止まっている…そんな気がした。
「また早く来てただろ」
彼の声が聞こえて背中からのハグ。
彼の吐息が耳元にかかる。
「ちょっとだけね」
指先はかじかんでもう感覚すらない。
そんな私の手を彼は握りしめた。
……あたたかい。
「こんなに冷えて、ほら!」
差し出されたのはカイロ。
「使い差しで悪いけど」
はにかんだような笑顔。
それは彼のぬくもりを内包しているかの様だ。
冷えた指先に感覚が戻っていく。
時計の針は定時を示す。
オルゴールの音が辺り一面に響いて、からくり時計から妖精が飛び出した。小さな魔法がかけられた気がする。
「行こう」
「うん!」
ぬくもりの魔法は暖かさとともに幸福を伴って私の元にやってきた。
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