児童文学

遠い嵐の予感

1,451文字 約3分で読了
作者:しとえ
春の田んぼではカエルの子どもたちの合唱が聞こえます。  今年生まれたオタマジャクシたちは、みるみるうちに成長して、小さなカエルになったのです。 「お母さん待ってよー」 カエルの坊やは一生懸命ジャンプしてお母さんも追いかけます。 まだお尻には短い尻尾が残っています。 初めて上がった陸の世界はたくさんの若葉が生い茂り、名残惜しそうに、少しばかり残った桜の花びらが舞い落ちます。 他の兄弟カエルたちもみんなぴょんぴょんと飛び跳ねてあっちこっち初めての陸の世界を見て回るのです。 「カタツムリのおじさんこんにちは!」 「こんにちは」 「とってもいい匂いがするよ」 「バラの花が咲いているのさ」 「どこに咲いているの?」 「上をごらん」 そう言われてカエルの坊やは上を眺めました。 ずっとずっと高いところに花のつぼみがついています。 下から見上げればほんの少しだけ花びらのピンク色が見えるのです。 「すごいなあでもあんなに遠くまで上がれないよ」 「なあに、大きくなったらジャンプして葉っぱから葉っぱへ飛び移って上まで上がることができるよ」 「本当?」 「もちろん!君のお母さんはとっても上手だよ」 そう言われて、カエルの坊やは早く大きくなりたいなと思いました。 大きくなってあのお花の上まで行けたらとっても素敵だろうと考えたのです。  ぽつり、ぽつりと、雨が降ってきます。 「わー、冷たい。空から水?」 「雨だよ」 「あめって、なぁに?」 カエルの坊やは不思議そうに上を眺めます。 「そうか、坊やはまだしっぽが残っているもんね。昨日まで田んぼの水の中にいたんだね。それじゃあ雨に濡れるのは初めてなんだ」 カタツムリのおじさんはそう言いました。 「空から水が降ってくるんだね」 カエルの坊やは不思議そう。 「そうだよそれが田んぼや池にたまっているんだよ」 カタツムリのおじさんはそう教えてくれます。  突然 空がピカッと光りました。 紫色の眩しい光。 そしてその後、ドーンゴロゴロ! とても大きな音がしました。  カエルの坊やはびっくり! 慌てて飛び跳ねて行きます。 「お母さーん !大きな音がするよ!怖いよ!」 大きなチューリップの葉っぱの下にお母さんはいました。 それから兄弟カエルたちも。 「怖いよ!怖いよ!お母さん!」 「大丈夫、あれはカミナリよ」 お母さんは子供達を抱きしめて優しく教えてくれます。 「雨がたくさん降る時はカミナリが鳴るの。とっても大きな音だけど怖くはないわ。たくさんの雨を降らせてくれる合図なの。 これからもっと時間が経って雨がたくさん降るシーズンがやってくるのよ。そうしたらあじさいっていう大きな紫色の花が咲いて、たくさん雷が鳴って雨が降るの。 みんな雨が降ったらお肌が濡れて気持ちいいでしょ。 雨はたくさんのお花や植物たちを育ててくれるのよ。 だからカミナリはとっても大きな音だけどちっとも怖くないわ」 お母さんもそう言って子供達をなだめました。  やがて雨は止み、葉っぱの上には水滴が溜まっています。 地面には水たまりもできています。 「すごいね、ちっちゃな田んぼみたい」 子供達は水たまりの上で遊びます。 カエルの坊やも水たまりに入って遊びました。 雨上がりの空気は少しだけ澄んでいて、綺麗に洗われた世界はいつもよりほんの少し鮮やかに見えます。 カエルの坊やは嬉しくてジャンプをしました。 水たまりの水が飛び跳ねます。  そうだ思いっきりジャンプできるようになったら、カタツムリのおじさんが言ってたみたいにバラの木の上に登って花の上でお昼寝できるかな、とカエルの坊やは考えました。  うららかな昼下がりの物語です。
2026/09/18 ・ 👁️ 106回 ・ 💬 0件

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