ミステリー・サスペンス

2行で崩れる完全犯罪

1,446文字 約3分で読了
作者:鴉未
「今ならまだ罪も軽いので、出来れば自分からやったことを名乗り出てくれませんか。」 先生の発言に、しん、と。場の空気が凍りました。 でも、ここで、私がしたことがばれるわけにもいきません。 私は下を向いて、私以外の誰かに、冤罪がかけられることを祈りました。 しかし、そんな私の願いも虚しく、先生は私の名前を呼びました。 「山田さん。あなたですよ。証拠もあるんです。それを出す前に、自分で認めませんか?」 そう言われたところで、もはや私には、だんまりを決め込むしか術がありません。ただ、私は、自分に後ろ暗いことがないかのように、前を向くしかできませんでした。 「はあ……。仕方ないですね……」 そういうと、ため息とともに、私の目の前に、決定的な証拠が突きつけられました──。 ーーーーーーーー  その事件は、屋敷の中で、1人の男の死体が見つかるところから始まりました。  犯人に背中へ包丁を刺され、うつ伏せに倒れている被害者を見て、その場にいる人々は慌てふためいています。  しかし、ひとりが、男の近くに犯人を指すヒントとなる血の文字を見つけて、皆がそのメッセージを読んでしまいました。  私は、この『ダイイング・メッセージ』を読んで、物事を成すときは、最後まで気を抜いてはいけないと思いました。  これまで用意周到に、計画を立て、取り組んでいたとしても、たった一つのミスから、全てが失敗してしまうかもしれない、と言うことが分かったからです。  このとき、私が真っ先に思い出したのは、小学5年生のときの授業参観でした。私は、参観に来る母親に良いところを見せようと考え、その日に行う理科の実験の内容を、1週間前から逆算して、入念に勉強しました。しかし、授業参観が行われる授業は、4時間目の理科ではなく5時間目の社会だったため、勘違いをした私の準備は無駄となり、恥をかいてしまいました。  この事件でも、刺殺ではなく毒殺を選んでいれば、あるいは被害者の動きをよく見ていれば、血でメッセージを残されることはなかったはずでした。授業参観でも、犯罪でも、用意周到に準備した時こそ、詰めが甘くならないように、丁寧にミスが無いか確認することが大切だと思いました。 このような形で課題図書『ダイイング・メッセージ』の感想文が書けました!もし文章構成を変えたい、もっと賢そうに、というオーダーがあったら教えてください。 ーーーーーー 「というわけで、何か言いたいことはありますか、山田さん」 「……ありません。読書感想文にAIを使ってしまい、すみませんでした。」 まさか自分が提出した作文自体が証拠になってしまっていたとは……。私はもう素直に謝るしかありませんでした。 「まあ、先生も、皆の『紙に書くのが大変なのでデジタルで提出をOKにしてほしい』という意見を通したら、まさかAI作文をそのまま出してくる生徒がいるとは思っていませんでした。でもせめて、詰めの甘さについて書いた作文を提出するなら、最後の部分だけは読み返して消してから提出して欲しかったですよね……」 「はい。すみません。自分でも、一周回って高度な皮肉だな。って思っていました。」 「ずいぶん余裕がありますね山田さん……。あまり反省してなさそうなので、反省文を書いて、明日までに提出してくださいね。」 「えっ。あ、いや反省してます!ごめんなさい!」 私のとってつけたような反省の言葉は、受け入れられませんでした。 ***** 翌日、私はしぶしぶ、先生に反省文を提出しました。 今回は、最後の2行を消すことは忘れませんでした。
2026/10/10 ・ 👁️ 64回 ・ 💬 0件

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