コメディ・日常
早起きの贅沢
758文字
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目が覚めた。…まだ薄暗い。
こういう早く目が覚めた朝は、カーテンを開けるよりも先にやる事がある。
体が、温かいものを欲しているんだ。
まずはお湯だ。ケトルに火をかける。
沸騰し過ぎてもいけない。100度にならないぐらいを感覚で探るんだ。
ガラガラ…グラグラッ
「ここだ」
火を止め、ポットに湯を回して温め、捨てる。
このひと手間が、後で香りの立ち方を大きく分ける。
缶の蓋を開ける。ふわりと鼻をくすぐる香り。
今年の春摘みダージリンだ。朝はフレーバーティーよりもピュアティーがいい。
スプーンに二杯。
手軽なティーバッグも悪くないが、紅茶の力を全部引き出すなら、やっぱりリーフに限る。
沸騰したての湯を一気に注ぎ込む。
茶葉が舞い上がり、そしてゆっくり沈む。
そして、また浮かび上がる。
ジャンピングだ。
沸かしたてで空気をたっぷり含んだお湯を使った証。
よし、冷めないうちに蓋をして、ティーコジーを被せる。
ここから4分ほど。じっと待つ。
立ちのぼってきた。
いい匂いだ。フレッシュでどこか甘くて、繊細な花のような香り。
立ち上がる蒸気に部屋の中がふわっとこの上品な香りで満たされてゆく。
いっそ窓を開けて、まだ眠っているこの街じゅうに配って歩きたいくらいだ。
五分経った。
コジーを外す。茶漉しを用意。
今日の相棒は、深い瑠璃色の縁取りに花柄に蝶が舞うカップ&ソーサー。
金の装飾がまた美しい。
ポットを傾ける
おお…澄んだ黄金色だ。カーテンの隙間から刺す光にキラキラと輝いている。
慎重に口に運ぶ。
「…おいしい」
果物みたいな華やかな香りが、口いっぱいにふっと広がる。
そのあとを追ってくる、かすかな渋み。そして、さっぱりとした太いコク。
熱い液体が喉を通り、身体にじんわりと染み渡っていく。
深い満足感と高揚が街まで行き渡っていくようだ。
こういう朝の贅沢が、体に一番効くんだ。
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