恋愛

代筆

925文字 約2分で読了
あなたが褒めてくれた字で綴る。 あなたとあの男が、恋仲になるための文を。 ―― 「え!?すごい、上手〜!」 同じ学校で同じクラスだったけど、初めて喋ったのは小学校低学年の頃、親に言われ嫌々通った書道教室。 自分の字が教室の先生による「お世辞」以外で、褒められるなんて夢にも思わなかった。 騒いで先生に怒られるあなたを、私はクスクスと笑った。 ハキハキと主張するあなたと、ボソボソしゃべる私。 屈託のない明るい笑顔と、暗く生意気な真顔。 教室の中心と、隅。 全く正反対の私達だったけれど、不思議と好きな漫画やアニメの趣味が合った。 「ねえ、今日も一緒にお弁当食べよ!」 でも仲良くなれたのはそれだけじゃないって、分かったときがある。 昔からどうしたって目立つあなたは、誰かに靴を隠されてしまい、結局見つからなかったとき、私の靴を片方ずつ履いて帰った。 「……ありがとう。」 あの時は靴を履いてない側の足の痛みより、あなたの泣きじゃくる顔の方が私の心を痛めた。 『明るい人物』の奥には、私と通じるところがあったんだ。 そんな、どこか根っこの部分が似ている私達はずっと一緒にいた。 上級生になっても、中学生になっても疎遠になるどころか、ずっと私を輪の中にいれてくれた。 グループの他のみんなも、少し見た目が派手で怖かったけど、意地悪どころか私のたまに言う冗談によく笑ってくれる。 ……そして、あなたは恋をした。 一つ上の先輩だった。 私を除いて誰もが、お似合いだと言った。 でもあなたの臆病な部分が、今どきラブレターで想いを伝えたいとか言い出す。 何度も書いたらしい。 でも自分の字が汚くて、恥ずかしくて全部クシャクシャに丸めたんだとか。 「こ、こんなお願いできるの、あなただけなの! 代筆してくれない!?」 「えー、付き合ったらどうせバレるよ?」 違う、本当はそんな理由で断りたいんじゃない。 「いいの、いいの!ねえ親友のお願いだから!」 ―― ……仕方なく引き受けた。 私は私の好きな人が、別の誰かと付き合う手伝いをしている。 あなたと出会わせてくれたこの『字』で。 一字書くたび、自分の気持ちを自覚する。 一文書き終えるたび、私の心はひび割れる。 でも、だからこそ。 大切なあなただからこそ。 今、幸せを願って『句点』をつけた。
2026/10/05 ・ 👁️ 40回 ・ 💬 0件

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