コメディ・日常
便り
537文字
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天橋立に来た。
なんとなく、松と白砂の繋がるあの光景を見たくなったから。
小さい頃、家族と一度来たらしい。その時の事を、私は覚えていない。二度目のはずなのに、初めて来た感覚だ。
今、目の前に広がる美しい光景を、当時の私はどう思っていたのだろう。
写真を見ても、思い出せなかった。
親に聞こうか。しかし、何年も会っていない。最近は、連絡も取っていない。
「便りがないのは良い便り」とも言うけれど、あまりにも長く便りがないのは、それはそれで不安になる。
展望台を降りようとすると、看板が見えた。短歌が書かれている。
大江山 いく野の道の 遠ければ
まだふみもみず 天の橋立
スマホで検索してみる。百人一首の中の一つで、小式部内侍が歌った作品らしい。
大江山を越え、生野を通る丹後への道は遠すぎて、まだ天橋立の地を踏んだこともありませんし、母からの手紙も見てはいません。
と、現代語訳が出ていた。
親元を離れてから、一度も帰省していない。小式部内侍の短歌と違い、天橋立には来た。二度も。連絡して、帰省するのも悪くない。
画面を切り替え、LINEを開く。
母にメッセージを送る。
今度のお盆に、帰ろうと思う。お墓参りもしようと思っている。
母から返事が来た。
『気をつけて帰っておいで』
帰りは行きよりも、足取りが軽く感じた。
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