SF・ファンタジー
天使のパンドラ
515文字
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秋風の涼しい午後三時。私は小さな自室にある戸棚の一番上の段から、小さな木箱を取り出した。
重過ぎる訳でもなく軽過ぎる訳でもないその木箱には鍵穴があり、鍵の持ち主は私だけ。私だけが、人差し指ほどある秘密の鍵で、この木箱を開けられる。
私はゆっくりとした手つきで鍵を開け、木箱の中に眠る「彼」を注視する。ヴェルヴェットの青い布が敷かれた箱の中で、目を閉じる翼の生えた少年。それは、人形でも、ガラス細工でもない。
ある日突然現れた彼は、今も生き物の温もりと冷たさを併せ持ち、息をしている。何者かなど、物かなど、分からない。いえ、そんなのどうでもいい。私はただその美しさと儚さに心打たれ、彼をひっそりと箱の中へ閉じ込めた。
そして時折寂しくなると、私は彼の眠る箱を開ける。眠る彼を見ていると、辛い事はどうでもよくなる。代わりに、彼の初心な翼を引き裂いてしまいたい欲求と衝動的な恍惚が私を支配する。
破壊と愛で身体が満ち足りる気持ち良さを堪能出来たら、私は再び箱を閉じて戸棚へ彼をしまい込む。誰にも彼を渡さないと誓いながら、彼の眠りへ深い呪いをかける。
さあ、午後のティータイムの準備をしなくちゃ。美味しい紅茶とクッキーが、愛で満ちた私を待っているわ。
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