恋愛
友達以上恋人未満
1,486文字
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僕と彼女は仲の良い友人だ。幼馴染であり、腐れ縁でもある。しかし恋人ではない。
僕は彼女を恋愛対象として意識することもあったが、今の関係が壊れてしまうことを恐れて、最後の一歩は踏み出せないでいた。
夫婦漫才のように仲良く喧嘩をしていると、他の友達に二人の仲をよく冷やかされた。そうすると彼女は決まって、こう言った。
「私は男女間の友情は成立すると考えているの。彼のことは親友だと思っているわ」
ある時、彼女と二人で宅飲みをしているときのことだった。
「僕たちは、友達以上恋人未満、というやつなのかな」
「それはちょっと違うわね。強いて言うなら、友達以上親友以下。友情と恋愛感情は一直線上に並べて比べるものではないと思うから」
それを聞いて僕は心底ガッカリした。彼女はどこまでいっても僕のことを友人としか見ていない。普段ならば、そこで引き下がるところだが、そのときは酔っていたせいか、抑えていた気持ちがあふれ出してしまった。
「『男女の友情は成立する』という君の考えが間違っていることを、僕は証明したいんだ」
言い終えてから、ひどく恥ずかしいことを言ってしまったと後悔したが、もう手遅れだった。彼女は驚いて真顔になった後に、すぐに僕が何を言いたいのか察したらしく、ニヤニヤしながら言った。
「……へえ、それは楽しみね。絶対に無理だと思うけど」
自信満々の彼女は賭けを持ちかけてきた。期限を区切り、そこまでに彼女の考えが間違っていると証明できれば、僕の勝ち。そうでなければ、彼女の勝ち。そういう勝負だった。
それから僕は気持ちを切り替えた。彼女に「友人」ではなく「恋人」として認めてもらえるように努力を始めた。
二人で食事をするときは、行き当たりばったりで居酒屋に入るのではなく、事前に雰囲気の良いレストランを調べて予約した。会話では彼女の言葉に肯定的に耳を傾け、歩道では車道側を歩くなど、異性としてのエスコートを徹底した。
ただ、僕のそうしたアピールに対する彼女の反応は鈍かった。気取ったレストランでは退屈そうに視線をさまよわせ、僕が意見を合わせて議論を避けようとすると「なんだかつまらない」と不満を漏らした。客観的に見ても、僕の努力が彼女に刺さっている手応えは全くなかった。
そして期限が迫った日、僕は彼女を夜景の見えるレストランに誘い、正式に告白をした。
「君のことがずっと好きだった。これからは、僕と恋人として付き合ってほしい」
一世一代の告白のつもりだった。しかし、彼女の反応は驚くほどあっさりしたものだった。
「ええ、もちろんOKよ。これからもよろしくね」
これまでと変わらない気安い感じで、グラスを傾けながら彼女はそう答えた。
少し拍子抜けはしたが、ともかく告白は成功し、賭けにも勝ったと僕は喜んだ。
「これで僕の勝ちだね。男女間の友情は成立しなかった」
しかし、彼女はすぐにそれを否定した。
「以前、話したように、友情と恋愛感情は一直線上に並べられるものではないの。別ベクトル。独立したパラメータ。恋愛関係になっても友情には影響がないのよ」
「どういうことだ?」
「あなたとは恋人になったけれど、それと同時に友人関係は続いている。私はそう考えているわ」
僕は混乱した頭で必死に考えた。もしかしたら、最初から全く勝ち目のない勝負をさせられていたのではないか。
嬉しそうに微笑む彼女が追い打ちをかける。賭けに勝った方は、ひとつだけ何でも要求できるという約束だった。
「これからは恋人として付き合っていくけれど、デートは今まで通り気取らない店で食事して、親友として遠慮なく議論を戦わせること。もちろん支払いは割り勘だからね」
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