コメディ・日常
新人と上司
1,473文字
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A「おはようございます! 今日からお世話になります、田中です!」
B「お、待ってたよ。私が教育係の木村な。よろしく。じゃあさっそく、うちの部署の仕事の流れから説明するな。うちは基本的に、クライアントから案件を受注して、それを形にして納品するのがメインやねん」
A「なるほど! もらって、作って、あげるんですね!」
B「……まあ、ざっくり言うたらそうやな。あげるっていうか『納品』な。で、まずは基本として、取引先の人に送る『ビジネスメール』の書き方から覚えてもらおうか」
A「ビジネスメール! やったことないです! あれですよね、最後に『バイバイ』って書くやつですよね!」
B「書くかぁ!!」
A「えっ! 書かないんですか!?」
B「書かへんよ。友達じゃないねんから。ビジネスメールの最後は『よろしくお願いいたします』で締めるのが鉄則やねん。バイバイって送ったら次の日から仕事なくなるわ」
A「よろしくお願いいたします、ですか。なんか、おねだりしてるみたいで恥ずかしくないですか?」
B「おねだりちゃうねん、挨拶や。あとメールの最初には、必ず『お世話になっております』って入れるんやで」
A「お世話になっております……? でも、僕今日入社したばっかりで、その人にお世話になったこと一回もないですよ? 嘘つくことになりませんか?」
B「嘘とかじゃないねん!!」
A「ええっ!?」
B「それがマナー、そういう決まり文句やねん。お世話になってなくても『なっております』って言うのが、社会のルールとしての優しさやねん」
A「社会の優しさ……。じゃあ、まだお世話してくれてないけど、これからよろしくねっていう、未来への投資の言葉なんですね」
B「……まあ、その解釈で納得できるならそれでええわ。で、メールができたら、次は名刺交換の練習もしような」
A「名刺! 自分の名前が書いてある、あのちっちゃいカードですね!」
B「そう。相手から名刺を出されたら、必ず両手で受け取って、『頂戴いたします』って言うんや」
A「両手で。こうですか?」
B「そうそう。で、受け取ったらすぐにポケットに仕舞うのはNG。机の上に綺麗に並べておくのがマナーやからな」
A「あ、机に並べるんですか。じゃあ、相手の名刺がどんどん増えていったら、机の上が名刺だらけになって、トランプの『スピード』みたいになりますね!」
B「遊ぶな仕事中に!!」
A「いや、並べるって言うから!」
B「並べるけど、ゲームはせえへんよ! 相手の名前を忘れないように、確認するために置いておくねん」
A「確認するため……。でも先輩、相手の顔の前に名刺をかざしながら喋ったら、名前を絶対に間違えなくて済むんじゃないですか?」
B「……それは失礼やろ。相手の顔が見えへんし、お前がずっと名刺で顔を隠しながら喋る変な奴になってまうやろ」
A「あ、僕の顔が隠れるんですか」
B「お前が隠してんねん。いいか、名刺は胸の高さで持って、相手の目を見て喋る。これが基本や」
A「胸の高さで、相手の目を見る……」
B「そう、その感じ……って、距離近っ!! なんで俺の5センチ前まで詰めてくんねん!」
A「相手の目をしっかり見ろって言うから! 近くないと黒目の色とか見えないですよ!」
B「黒目の色はどうでもええねん!!」
A「どうでもいいんですか!?」
B「視力を測ってるんちゃうねん。アイコンタクトや。まあ、初日やからな。これから少しずつ覚えていけばええよ。焦らずいこう」
A「はい! 先輩、僕、一生懸命がんばって、この会社の『王様』になります!」
B「社長な!!」
A「あ、社長か!」
B「ごっつい新人が来てもうたわ……」
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