SF・ファンタジー
占い館、閉店セールと片方のピアス
1,544文字
約4分で読了
占い師・神代卑魅呼の占い館&アクセサリーショップが閉館を発表。閉店セールには名残を惜しむ人たちが詰めかけ、アクセサリーは完売。
閉店セールでピアスを買った3人の、その後の物語。
[1]
ピアス購入1ヶ月後
山岸里奈 20歳 大学生
「ジャー」「ポチャン」
流すボタンを押すと同時にトイレに左耳のピアス落下。小さな声でつぶやく。
「Help me 神様」
水中から女神登場。
「あなたが落としたのは金のピアス? 銀のピアス? それともこのパチ物?」
「その話知ってる。人を試すような嫌な話」
「屁理屈言うな! 私の存在意義が揺らぐ」
女神は続けた。
「あなたさあ、人が思い付かないような反論したつもりかも知んないけど、あなたの反論、そんなにスペシャルじゃないよ。100人いたら、5、6人はおんなじこと言う」
めんどいから流すボタン再度押した。
「ジャー」「あ〜」
女神は流れていった。
[2]
ピアス購入2ヶ月後
佐原麻衣 27歳 フリーランス
「ヤダ〜」
思わず声が出た。ドブ川に右耳のピアスを落とした。対岸の石垣で日光浴してた亀さんを見てて、柵から身を乗り出してたんだ。通りすがりの老人が寄ってきた。
「どうかしました?」
「ドブにピアスを落としたんです」
「ピアス?」
麻衣は左耳のピアスを見せた。「これの片割れです。多分あれです」濁った水の底にうっすらと見える赤い石を指差した。
「ああ、あれね。見えてるんだったら、なんとかなるから、僕が拾っておくよ。明日またここに、同じくらいの時間に来られる?」
「来られますけど、そこまでやってもらうのは悪いから……」
「いや、いいよ。僕は毎週木曜日、この辺を散歩するんだけど、明日だけ2日連続で、この辺散歩すれば済む話だから。僕らの年になると、毎日が日曜日だから」
「アハハハハ(そっか、この人、結構暇なんだな)」
老人の言葉に甘えることにした。
帰宅の道すがら考えた。会社員って、仕事を辞めてしまったら、どうやって過ごしていいかわからなくなるんだろうな。私の身の回りにいる男の人って、そんなパターン多いよ。それはそうと、お礼は何にしようかな?
翌日。昨日の場所に行くと、老人が待ってくれてた。麦わら帽子を被って、虫取り網を持ってた。
(あいみょん「マリーゴールド」か? 井上陽水「少年時代」か?)
虫取り網でピアスを拾って、ペットボトルの水で洗ってくれてた。Xで水中の落とし物を捜す動画を見て、いろいろとマネしたんだって。
お礼のことを言い出すと、「これくらいのことでお礼されたらバチが当たる」なんて言うから笑った。
「お礼の代わりに、僕のXのアカウント見てよ」
「えー、それくらいのことでいいんですか。じゃあ、今日、見に行って、コメント入れます。アカウント名はなんていうんですか?」
「小林正の毎日が日曜日」
思わず吹き出した。
家に帰ってXを見た。
「フォロー800 フォロワー2」
腹筋崩壊するほど笑った後、コメ入れて、フォローした。
[3]
ピアス購入3ヶ月後
田嶋由美 34歳 会社員
「あ〜あ」
今年は運気最高のはずが、立て続けにピアスの片方だけを無くした。友達からもピアスを無くした話は聞いたことあるけど、そういうのって、彼氏と会ってて無くしたみたいな艶っぽい話なんだよね。私の場合は、超絶混み合う通勤電車が原因。
「私、なんだか、お父さんが好きな、浜田省吾の『もうひとつの土曜日』みたいだな……」
「そうだ、決めた!」今までは、年不相応に思えて避けてた色違いのピアスに挑戦してみよう。学生みたいに安くて派手なのと組み合わせみようかな。
翌日。会議が始まる前に、ピアスを着け直すふりをしてみたら、牧野さんが気づいた。チラッと見て少し口元がほころんだ。この顔はたまに見る。ミニスカ作戦の時もこんな顔した。
年の差あるから、牧野さんの前では若い子でいられる。
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