コメディ・日常
カラスの素顔
914文字
約2分で読了
放課後、生活指導でこっぴどく叱られ、凹んだまま教室に戻ったときのことです。いつもと変わらないなんてことないはずの教室から美しい歌声が聞こえてきました。私は思わずドアを開けるのを躊躇してしまいます。でも荷物一式を教室に置き去りにしたままだったので、意を決してドアを開けました。すると教室にはクラスメイトの一部からカラスと揶揄されている君がいました。艶やかできれいな黒髪の君は目が切れ長で視線も鋭く、どことなく話しかけづらい雰囲気をまとっています。君はドアの開く音に気づき、視線を私へと向けました。私は思わず固まってしまい、その数秒間はメトロノームの音だけが響いていました。
「どうしたの?」
君は不思議そうな顔をして私に質問を投げかけます。その雰囲気はどことなく普段とは違いました。
「生活指導で呼び出されちゃって……」
「あらら。でもなんで入り口で突っ立ってるの?」
「あ、いや、その」
今思うとそのときの私は明らかに不審者でした。
「き、きれいな歌声が聞こえてきて……その、えっと」
そこまで言って口ごもると君は笑みをみせます。
「ありがとう。私ね、音楽部に入ってるんだけど知らないよね、クラスで話したことないもん」
どうしてクラスで話さないんだろう? と頭に疑問を浮かべると、君はその答えを話し続けました。
「クラスには私のことをカラスって裏で言ってる人たちがいるでしょ? なんかそういう人たちに知られたくないんだよね。バカにされそうだし」
君の表情が少し翳ってしまった気がします。それがなんだか悔しくて私は思ったことを言い放ちます。
「この歌声をバカにするなんてアホだから気にしない気にしない。そんなのアホウドリだよアホウドリ」
すると君は笑いをこらえながら、身体を震わせます。
「それ、いい! 私のことカラス呼ばわりするようなやつはアホだからアホウドリ。おもしろっ」
前から仲良くなりたかった君のはしゃぐ姿を見て、打ち解けられたのだろうと私はうれしく思えました。
その日は一緒の帰り道、私は君に問いかけます。
「私が鳥だったらなにになる?」
「フクロウかな、指導されるほど授業中寝てるから」
「もう、その話はやめてってー」
そう言い合う君と私には笑顔が溢れていました。
\ 次の作品を探す /

読者の感想・応援メッセージ