コメディ・日常

刹那の戦い・SF(セツナファイト)

688文字 約2分で読了
作者:たーたん
 その刹那、時が止まった。  声を発するより早く、視界が暗くなる。  ほんの一刹那だった。  遅れて、衝撃が全身を駆け抜ける。  その刹那、理解した。  何かが来る。 「俺が刹那だ」  刹那――そう名乗った男を呼び捨てにした刹那、体が重くなる。  刹那の逡巡が命取りになる。  そう悟った刹那には、もう遅かった。  捕まえようと伸ばした手を、刹那のうちに影がすり抜ける。  そして刹那にして距離を取った男は、笑った。  ほんの刹那ほどの笑みだった。   視線が交わったのも、わずかな刹那。  その刹那だけは、刹那では済まなかった。  主の帰宅後、家に平穏が訪れるのはいつも刹那の間だけだ。  そんなものは、いつだって刹那にして終わる。  今夜も一刹那たりとも油断できない。  またその刹那、異変は起きた。  空気が震えた。  廊下の奥から、高笑いが響く。  刹那ののち、小さな影が姿を現す。 「私も刹那よ」  小さき侵略者は刹那にして駆け出した。  刹那の迷いもなかった。  刹那の判断で進路を定め、刹那のうちに間合いを詰める。  そしてその刹那を制した小さき刹那が、容赦なく腹部へ突進した。  息が止まる。  刹那の間、意識まで遠のいた。  だが相手は刹那も待ってくれない。  その瞬間の欲求、  その瞬間の満足、  その瞬間の快楽だけを求める姿は、あまりにも刹那的だった。  もはや刹那主義と呼んでも差し支えない。  二つの刹那が重なる。  刹那と刹那が交差する。  刹那と刹那の狭間に、刹那の沈黙が生まれた。  そして、最後の刹那。  声が響いた。 「おかえり! パパ!」  パパは一刹那、目を丸くした。  次の刹那には、いつもの顔へ戻っていた。  ただ、その口元だけが。  ほんの刹那だけ、緩んだ。  これが刹那家――SF(セツナファミリー)。
2026/09/25 ・ 👁️ 117回 ・ 💬 0件

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