SF・ファンタジー
ザラメのパンと彗星の帰り道
681文字
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「トリックオアトリート!」
ふと扉の外から子供の声が聞こえた。
もう随分遅い時間だ。
お菓子はみんな夕方にやってきた子供たちにあげてしまった。
扉を開けると小さな銀色の髪の子供がいた。
……おやおや、随分と懐かしい顔だ。
久々に会ったその子を見て、私はにっこり微笑んだ。
「入りなよ。残念ながらお菓子はもうザラメのパンしか残ってないけどそれでもいいかい?」
明日の朝食用にとっていたザラメのパンはパサついていたが、オーブントースターで焼き直す。
「バターはどうだい?」
「やった嬉しい!」
子供はパッと輝いたような笑顔で笑う。
パンの上に乗せたバターはあっという間に溶けてキラキラとザラメが輝いて見えた。
まるで小さな星屑の様だ。
「美味しい!もっと食べたいよ」
私は呆れ顔で残っていたパンも全部トースターで焼く。
「随分お腹が空いていたんだね」
「だって76年ぶりだもん!それに魔女さんの手作りパンってすごく美味しい大好きだよ」
「……そうか、もうそんなに経つのか」
「そうだよ、地球にやってくるのは地球の時間で76年に一度だよ」
子供は星の子だ。
76年に一度やってくる彗星の子供。
私はこの地球で、もう何世代も何千年も、たくさんの子供たちを見送ってきた。
星の魔女と星の子供。
変わらず存在し続けるのは私たちだけなのだ。
空に輝く彗星の命は人間よりもずっと長いけれど地球よりはそれでも短い。
いつかこの子も大人になって私の命を通り越して、そして消えてゆくのだろう。
だが、いずれやってくるであろうその時間までの間こうして私に会いに来てくれるのはどれほど嬉しいことだろうか……
この無限とも言える長い長い時の中で。
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