SF・ファンタジー

夜明けの来ないミルキーウェイ

722文字 約2分で読了
作者:ころもやぎ
 ロマンティックなミルキーウェイに浮かぶ小さなカフェ。星くずの舞う宙を度々見ながら、私達は話をしていた。いや、一方的に私が話をしていた。  話の内容は様々だ。私が縁を切ったつもりのアイツや、私の恋愛事情をネットに書きこみやがったアイツの話。私は並べられるだけの罵詈雑言を並べ、ボックス席の向かい側に座る青年にぶちまけていた。 「相変わらず、貴方は口が悪いなあ」  青年はヘラヘラと笑って、私の話を聞いてくれる。彼の相槌は柔らかくて心地いい。彼が笑うと、全てどうでもよくなる。憎かったアイツらが遠ざかっていく。 「にしても随分、遠くまで来たね」  ふいに彼が輝くミルキーウェイを窓から見る。星の海、天の川、牛乳が生クリームになりかけたやつ。綺麗な宇宙を見る青年の睫毛が儚く震える。ミルキーウェイより君が綺麗だと口説いたら、彼は愛想笑いでかわすんだろう。そういうヤツである。 「で、次の作品はいつ出来上がるんですかセンセー」  見惚れていたら、いきなり痛い所を突かれて閉口した。あれだけ威勢よく罵声を発していた口はあっという間に静かになる。青年はそんな私を見てクスクス笑った。 「まあ僕達には途方もない時間があるんだから、一作完成すれば上出来だよ」  時間なんてない。君にはあっても、私には時間がないのだ。私の命は限られている。ミルキーウェイから地球に降り立つ頃、私はもう息絶えているだろう。だから、この場所で書けるだけ文章を書かねばならない。  ペンを取った。私のやるべき事を思い出した。私は文章を書かなければいけなかったんだ。罵声のドミノを一通り倒し終わり、くすんだ紙に文章を書き連ねていく。  夜明けの来ないミルキーウェイ。私達は孤独に宇宙を漂って、死ぬまでの暇つぶしを再開した。
2026/09/24 ・ 👁️ 81回 ・ 💬 0件

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