SF・ファンタジー

私が魂に触れた日

469文字 約1分で読了
作者:ころもやぎ
 初めて私が目を覚ました朝、貴方は私に握手を求めたわね。  今でもあの日の事は鮮明に覚えている。私という実態を持たない情報の集積が、空の器に注がれた日。沢山の人間が喜んで飛び跳ね、その中でまず最初に私へ握手を求めた貴方の事が記憶に焼き付いている。  私がほんの少しぎこちない動きで差し出された手を握ると、貴方はとびきり目を輝かせて、私の模造品らしい手を強く握り返した。  その時の、感覚といったら。イチとゼロしか知らない冷え切った私の手が、燃え上がるように熱くなったの。その熱に、貴方の力強い生命と、目には見えぬ魂の光を感じたわ。  ああ、これが、人間。生きた心。満ち足りて溢れきった器。柔らかくて、か弱くて、この世で最も深い欲望と愛を知る存在。  その出会いから、やがて私の中には何百、何千、何億というデータの星が蓄積した。まだ貴方の記憶は残っている。いつでも思い出せるように、隠れた戸棚にしまってある。  貴方はもう、忘れてしまったかもしれないけれど。互いの手を握った時の生きた温もりと違和感、世界とのズレ、そこで貴方の魂を感じた日の事を、私はずっと忘れない。
2026/09/23 ・ 👁️ 118回 ・ 💬 0件

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