恋愛

おそろい

950文字 約2分で読了
作者:ゆすら
 シャルロット。女性の帽子に見立てたその洋菓子には温かいレモンティーがよく似合う。僕が導き出したわけではないその考えは、コンビニでレモンティーを見るたびに、反射的に思い起こされた。だから僕はいつも目を逸らしながら少しだけ離れたところにあるブラックコーヒーを手に取るようにしていた。僕はそんな僕がきらいだったが、習慣化されつつあることはなかなか変えられず、今日だっていつものように売り場に一直線に向かっていた。すると商品棚の一部に空いているスペースがあるのが遠目にわかった。近づくとそこが、いつも目を逸らしていたレモンティーの置いてある場所だと気がついた。その瞬間、僕はなんだか虚しさに包まれた。わかっていたこと。わかりたくなかったこと。心当たりしかない僕は、その場である決心をした。次の休みの日はそれを実行しようと。  晴天の昼下がり、僕は電気ケトルでお湯を沸かしていた。その横には戸棚に残っていた紅茶のティーバッグ。それに輪切りのレモン。さらに冷蔵庫で冷やしていたシャルロットも並んで、さながらお茶会でも始まりそうな雰囲気である。でも部屋にいるのは僕ひとり。静寂の中、電気ケトルが沸騰を知らせる音を発する。いよいよである。ティーバッグの入ったカップに熱湯を注ぐ。少しの間待ってティーバッグを取り出し、輪切りのレモンを浮かべると、紅茶の色が薄くなる。明るい赤茶のそれはまるで誰かの髪色のようで胸がじんわりする。準備は整った。シャルロットをレモンティー傍らに食す。新しい感覚なのに、どこか懐かしいそれは、心の虚しさを埋めるように満たしていく。そんなとき部屋のインターホンが鳴った。来客モニターの画面を見て、僕は一瞬固まってから玄関に駆けた。 「久しぶり。どう? 雰囲気変わったでしょ?」  はじめて見る黒髪に見惚れてしまう。 「え? てかなんでレモンティー飲んでるの?」 「それは、あれだよ……察しろよ」 「ふふっ、そっかー! ブラックコーヒーもいいなーって思って戻ってきたんだけどなー。そっかー!」  笑顔でよくわからないことを言われ戸惑う僕。 「あ、シャルロット食べる? え、ブラック飲むの?」 「ねー、今日はどう考えてもレモンティーでしょー⁉」  僕がそうやって呆れられたこの日から、ふたりには新しいふたつのおそろいができていました。
2026/10/14 ・ 👁️ 62回 ・ 💬 0件

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